リンパと病気
リンパと病気
リンパ液は、全身をめぐっているため、リンパの不調による症状は、全身のどの部位でも起きます。
リンパに関わる病気
【リンパ浮腫】
むくみには「リンパ浮腫」という危険な病気が隠れている場合があります。リンパ浮腫は、リンパ液の流れが滞ったことにより、リンパ液がたまり、むくみが慢性化してしまった状態です。発症すると完治しづらく、多くの場合、一生付き合わなければならない病気です。また、進行しやすく、むくんだ影響により関節が曲げづらくなるなど、生活に支障が出る場合があり、予防と早期発見が大切です。
リンパ浮腫は大きく二つに分けられます。
先天的、もしくは原因不明なもの
全体の約6〜10%
・二次性(続発性)リンパ浮腫
がんの手術によるリンパ節切除や放射線治療、感染、外傷などで起きる
全体の約90%
リンパ浮腫のステージ
病期(ステージ) |
特徴 |
潜在性リンパ浮腫 (ステージ0) |
リンパ管路の異常が確認される次期。側副循環路が働いているため、特別な障害はない。 |
可逆性リンパ浮腫 (ステージ1) |
腕や足に軽いむくみが見られるが、皮膚はまだ柔らかく、指で押すと凹み、跡が残る。むくんだ部分を上にあげておけば元に戻る時期。 |
非可逆性リンパ浮腫 (ステージ2) |
皮膚に柔らかさ、弾力さがなくなり、指で押しても凹まなくなる。むくんでる部分を上にあげても元に戻らない時期。 |
像皮症 (ステージ3) |
皮膚組織にある膠原繊維が以上に増殖し、大きくむくみ、皮膚が変形し、表面が硬くなる。象の皮膚に似ているため象皮症という。 |
進行するとどうなる?
リンパ管は枝のようにお互いにつながっており、一部のリンパ管が塞がった場合、リンパ液は新しくできた細いリンパ管(側副循環路)を使って流れます。まだむくみが認められない発症初期(滞在性リンパ浮腫)には、この脇道である側副循環路のおかげで、リンパ液は迂回して流れることができ、特別な障害はみられません。しかし、さらに進行しステージが上がると、この脇道では追いつかなくなり、症状が現れてきます。
合併症
①蜂窩織炎(ほうかしきえん)
小さな傷や虫刺されなどから細菌が侵入・感染して炎症が起き、その炎症が腕や脚全体に広がってしまう状態。赤い発疹や熱、痛みを伴う。患者の半数以上が発症。
②リンパ管炎
リンパ管内に細菌が入り込み、リンパ管に沿って赤い線状にみえる炎症を引き起こす。
③リンパ漏
むくんで張った部分に穴が開き、そこからリンパ液がリンパ管の外に漏れ出る。
④リンパ管肉腫
長期間持続したリンパ浮腫が、リンパ管肉腫になることがある。(悪性の腫瘍)
【悪性リンパ腫】
「悪性リンパ腫」とは、リンパ系組織から発生したがんのことです。リンパ系は、リンパ管、リンパ節、リンパ液のほか、骨髄、脾臓、胸腺、扁桃腺などからもなります。悪性リンパ腫は、リンパ球が成長の過程で悪性化したものです。リンパ球はリンパ管のみならず血管も通過するため、リンパ系組織以外の部位も含め、体の様々な部位で発生する可能性があります。
種類
悪性リンパ腫は、「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の大きく二つに分けられます。「ホジキンリンパ腫」は全体の罹患数の約10〜20%で悪性度が低いため、治療で治ることが多いですが、「非ホジキンリンパ腫」は、全体の約80〜90%で、進行する可能性があります。
【非ホジキンリンパ腫】
進行のスピードにより3つのタイプに分けられます。
非ホジキンリンパ腫の分類
・低悪性度 (年単位で進行)
ろ胞性リンパ腫
MALTリンパ腫
・中悪性度(月単位で進行)
びまん性大胞性B細胞性リンパ腫
未分化大細胞リンパ腫
・高悪性度(週単位で進行)
リンパ芽球性リンパ腫
非ホジキンリンパ腫のステージとグレード
病期(ステージ) |
特徴 |
I期 |
病変が1か所のみ |
Ⅱ期 |
病変2か所以上、かつ横隔膜の同じ側のリンパ節領域にとどまっている。 |
Ⅲ期 |
病変が横隔膜の両側のリンパ節領域に及んでいる |
Ⅳ期 |
リンパ節以外に病変が認められる |
グレード |
特徴 |
グレード0 |
無症状、従来通り活動ができる |
グレード1 |
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受ける。軽い家事、事務など軽労働はできる。歩行にも問題ない。 |
グレード2 |
歩行や身の回りのことはできるが、時々介助が必要。軽労働はできないが、日中の50%以上は起きていられる。 |
グレード3 |
身の回りのことはある程度できるが、しばしば介助が必要なことがある。日中の50%以上は就床している。 |
グレード4 |
身の回りのことはできない。常に介助が必要。終日就床が必要。 |
非ホジキンリンパ腫の症状は、発生する場所により異なりますが、最も多く見られるのは、リンパ節が大きく腫れる「リンパ節腫大」です。
非ホジキンリンパ腫は、リンパ節だけではなく、全身のほぼ全ての臓器に発生しうる〝がん″です。そのほかにも発熱、体重の減少、ひどい寝汗がよくあり、これらの症状を「B症状」といいます。
センチネルリンパ節生検
悪性リンパ腫は、「センチネルリンパ節生検」という検査により調べることができます。センチネルリンパ節とは、悪性腫瘍がリンパに乗って流れてきたときに、最初に到着するリンパ節のことです。そこを調べることにより、他のリンパ節に転移がないかを調べることができます。例えば、乳房の場合は、脇の下のリンパ節がセンチネルリンパ節となります。このセンチネルリンパ節生検により、リンパ節に明らかな転移がある場合以外はリンパ節の切除が不要となりました。
【番外編】
飛行機内でなくてもエコノミークラス症候群?
飛行機の中で同じ姿勢を取り続けることで起こる「エコノミー症候群」。7時間以上のフライトで発症頻度が高くなると言われています。実は、エコノミー症候群が危険なのは、飛行機が上空で飛んでいる時よりも、「着陸して長時間の同じ姿勢から解放され、立ち上がり歩き始めた時」の方が危険なのです。それは、筋肉のポンプ作用により、下半身の静脈の血液が一気に流れ始めるためです。その時に、血管内に血栓があると、一気にそれが肺まで到着してしまい、血管をつまらせ、「肺塞栓」を起こし、最悪死に至る場合もあります。これは、エコノミークラスの乗客に多いですが、ファーストクラスやビジネスクラス、電車やバス、車などに長時間乗っている時も発症することがあります。長時間同じ姿勢でいる場合は、「深呼吸をする、かかとを上げ下げする、こまめに水分を補給する、体を動かす、ふくらはぎを揉む」などし、予防と注意をしましょう!
次回は「リンパを滞らせないために」です。
閲覧ありがとうございました。