夏の脳梗塞②
夏の脳梗塞②
「脳梗塞」は、脳の血管が詰まると、その先に血液が流れなくなり、酸素や栄養素が送られなくなることで脳細胞が壊死する病気です。
脳梗塞の症状
脳は、「前頭葉」「頭頂葉」「後頭葉」「側頭葉」などに分かれており、それぞれ各部位で様々な機能を管理しています。そのため、障害が起こった脳細胞の部位により症状が異なります。また脳は、左右の機能が全く同じというわけではないため、左右のどちら側に損傷が起きたかということも重要です。脳の機能の中には、完全に片方の「大脳半球」のみで制御されているものがあります。例えば、体の感覚や運動は、左半身が右の大脳半球、右半身が左の大脳半球によって制御されています。また、ほとんどが片方の大脳半球で制御されている機能もあります。例えば、言語は主に左側の大脳半球によって制御されています。このような機能は、一方の大脳半球だけの損傷で完全に失われることがあります。
・手足や顔の片側が痺れる、もしくは動かしづらい
・喋りづらい(ろれつが回らない、言葉が出てこない)
・真っ直ぐ歩けない
・嘔吐
・他人の言っていることが理解できない
・見え辛くなったり、二重に見える
など
1つの症状のみが出る場合と、複数出る場合とがある。突然症状が出るケースがほとんどで、一時的に治まることもある。ただし、時間が経つと悪化することが多いため注意が必要。脳梗塞は早期発見、早期治療がカギとなるので、症状が出た時点で早急に医療機関に行くことがなによりも大切。
時間との勝負
脳梗塞の症状が現れてから、時間が経てばたつほど、詰まった血管の先の細胞が壊死していきます。最悪の場合、死に至ることもあります。脳梗塞は発症してから3〜4時間が過ぎると、血栓より先の血管が脆くなり、血流が再開した時に血管が破れ「脳出血」を起こす危険性が高くなります。脳出血を起こすと、出血した血液が脳を圧迫し、命に関わる事があります。命は助かっても、高い確率で後遺症が残る可能性があり、寝たきりになってしまう場合もあります。脳梗塞の早期発見ににつながるサインで大切なのが「FAST」です。
FAST
・Face(顔)笑ってみましょう!
・顔の片側が下がる
・顔がゆがむ
・Arm(腕)両腕をあげて、キープしてみましう!
・片側の腕が下がってくる
・Speach(話す)短い文章をいつもどおり話してみましょう!
・言葉が出てこない
・ろれつが回らない
これらの症状が一つでもある場合
↓
・Time(時間)発症時間を確認し、すぐに119番へ!
「こんな症状なんかで病院なんて…」と思い、家で様子を見る方も多い様ですが、脳梗塞や脳卒中は、治療の遅れが命に関わる病気です。本人が、脳梗塞の症状に気づかない場合もあるので、周囲の方々が脳梗塞の疑いがある方がいる場合は「FAST」のサインを試し、早い対応に繋げることが大切です。
一過性脳虚血発作
脳梗塞には「一過性脳虚血発作」という前兆があります。脳の一部の血流が一時的に悪くなる事で、脳梗塞と同じ症状が現れますが、脳細胞が壊死する前に、血液の流れが改善するため、数分から数十分程度で治る事が多く、長くても24時間以内には症状がなくなります。そのため、多くの場合放置されてしまいます。しかし、これを放置してしまうと、3ヶ月以内に10〜15%の割合で脳梗塞を発症し、そのうちの半数は一過性脳虚血発作から48時間以内に脳梗塞が起こっている事がわかっています。
一過性脳虚血発作後の脳梗塞リスク
一過性脳虚血発作後に脳梗塞を起こすリスクは一人一人違います。その危険性を予測する指標が「ABSD2スコア」です。
《ABCD2スコア》
項目 |
条件 |
点数 |
A 年齢 (Age) |
60歳以上 |
1 |
B 血圧 (Blood pressure)
|
収縮期血圧≧140mmHg かつ/または 拡張期血圧≧90mmHg |
1 |
C 臨床症状 (Clinical feature) |
半身麻痺 |
2 |
麻痺を伴わない言語障害 |
1 |
|
D 症状の持続時間 (Duration) |
60分以上 |
2 |
10~59分 |
1 |
|
D 糖尿病(Diabetes) |
糖尿病 |
1 |
一過性脳虚血発作後、2日以内の脳梗塞発症率
・0〜3点 1.0%
・4〜5点 4.1%
・6〜7点 8.1%
各項目の合計点が高いほど、脳梗塞を起こす危険性が高いとされています。
脳梗塞は、早期発見、早期治療がとても大切です。「FAST」は忘れず、頭の片隅に入れておきましょう!
次回は、「動脈硬化」です。
閲覧ありがとうございました。