動脈と静脈
動脈と静脈
「血管」は、極小の毛細血管まで含め、すべてつなぎ合わせると9~10万kmにもなると言われています。これは、地球の約2周半にもなる長さです。心臓から出た血液が体内を巡って再び心臓に戻ってくる時間は約30秒で、大動脈は毎秒1メートルのスピードが出ていると言われています。
動脈と静脈の流れ
血液は、心臓から押し出され毛細血管に向かって流れていくのが「動脈」、反対に毛細血管から心臓に戻ってくるのが「静脈」です。血液の循環には大きく分けて「肺循環」と「体循環」の2つのルートがあります。
≪肺循環≫
・「右心室」から「肺動脈」を経て、肺でガスを交換した後「肺静脈」から「左心房」に戻る
≪体循環≫
・「左心室」から「大動脈」を経て、「動脈」→「細動脈」→「全身の毛細血管」、そして細胞の間で物質交換をした後「細静脈」→「静脈」→「大静脈」から「右心房」に戻る
動脈血と静脈血
「動脈血」とは酸素を多く含んだ血液で、反対に「静脈血」とは酸素が少なく二酸化炭素を多く含む血液です。酸素は、肺でのガス交換を起点として、全身の毛細血管から放出されるまで多く含まれています。肺から左心房、左心室を経て毛細血管まで流れていく道のりには「動脈血」、反対に毛細血管から右心房、右心室を経て、肺に戻る道のりには「静脈血」が流れています。これらを整理すると、肺循環においては、「肺動脈に含まれる血液は静脈血」、「肺静脈に含まれる血液は動脈血」となります。
≪動脈血≫
・肺→左心房→左心室→毛細血管
≪静脈血≫
・毛細血管→右心房→右心室→肺
動脈と静脈の構造
動脈と静脈は、「外膜、中膜、内膜」の3層で成り立っていて、血液と直接触れる内膜には「内皮細胞」という細胞の層があります。動脈は、心臓から強い力で押し出される血液を受けるために、「外膜」は薄く硬く、「中膜」は血圧に耐えられるよう伸縮性と弾力性に富んでおり、「内膜」は薄いつくりになっています。心臓から直接伸びている大動脈は直径2~3cmと最も太くなっています。静脈も同じく3層ですが、動脈に比べると伸縮性、弾力性はあまりなく、薄くしなやかです。それは、静脈は動脈よりもかかる圧が低いからです。そのため、静脈には血液が逆流しないように一方向にのみ開く「弁」がついています。
動脈と静脈の流れる場所
「体循環」では、動脈は心臓から体の末梢側の細胞に向かって流れているのに対し、静脈は心臓に向かって動脈とは逆方向に流れています。しかし動脈と静脈は、体内の多くの部分で互いにまとわりつくように平行して走っています。また、動脈は比較的体の深いところを走っていますが、静脈は浅い層(体の表面側)を走っています。動脈内は血圧が高く、切れると大出血につながるため、自分を守るためにもこのつくりは理にかなっていると言えます。
動脈でも比較的浅い層を走っているものには「頸動脈」(首の横側)や「橈骨動脈」(手首のあたり)があり、脈拍を測ることができます。
細動脈と細静脈
「細動脈」と「細静脈」の先には髪の毛よりも細い直径5~10㎛の「毛細血管」が網目状に広がっています。毛細血管は1層の内皮細胞のみで成り立っており、たくさんの孔があいています。血流の速度は秒速0.5~1mmと非常に遅いと言われています。これらの構造は血管内の血液と細胞の間での「栄養素や酸素、二酸化炭素、老廃物」などの受け渡しをしやすくするためです。また、細動脈から毛細血管の移行部には「前毛細血管括約筋」という毛細血管への血流を調節している部分があり、例えば、暑いと感じた時にはこの括約筋が弛緩し毛細血管への血流を増やすことで体内の熱を放出します。反対に寒いと感じた時には括約筋が収縮し、毛細血管への血流を少なくさせることで体の熱の放散を防ごうとします。基礎代謝が落ちている人は、熱の生産が少ないため熱の喪失を減らそうと括約筋が収縮していることが多くなるため、「冷え」を感じやすくなります。
次回は「心臓」です。
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