骨格筋
骨格筋
私たちは通常、自分の体を思い通りに動かすことができます。これは脳からの指令によるもので、これを「随意運動」といいます。しかし、脳からの指令を介さずに手足の筋肉を動かすこともあります。これを「反射神経」といいます。
脳からの指令 《随意運動》
大脳皮質の運動野から出た指令は、脊髄で整理され運動神経を通り、各筋肉に届けられる事で、はじめて体を思い通りに動かすことができます。脳からの運動指令には、微弱な電気信号が使われていて、この電気信号が、目的の筋肉に届けられ、筋肉を収縮させ、動かすことができます。一般的に「運動神経が良い」というのは、脳からの指令がスムーズに正確に筋肉に伝えられるということです。神経系の発達が著しい5歳〜8歳の間にいろいろな動きを経験することは、運動神経の発達に大きく影響します。
脳からの指令を待たない 《反射運動》
熱いものに触れた時などに、自分の意思とは関係なく瞬時にパッ!と手を引くのは、脳の判断・脳からの指令とは関係なく起こります。熱さの危険を察知し、脊髄が筋肉を収縮させる指令を出していて、これを「脊髄反射」といいます。この脊髄反射により、「熱い」という情報が脳に伝わってから運動指令を出すよりも、素早い行動が可能になります。突然の危険を回避するのにとても役に立っています。
筋肉の役割
①エネルギー生産
姿勢の維持、日常の動きなどでも常に筋肉は働き、熱を生み出しています。体温を維持するためにもこの熱は利用されていて、寒い時には身体を震わせ、筋肉を強制的に収縮することで熱をつくり、体温を上げるようにと脳から筋肉に指令が出ます。そのため、筋肉量が少ないと生産する熱の量も少なくなるため、体が冷えやすくなります。
夏に比べると冬は、熱をたくさん作り出す必要があるため、筋肉での熱生産も多くなり、基礎代謝量が高くなります。
②免疫力
最近の研究では筋肉量が多い人の方が、少ない人よりも、病気による死亡率が少ないことが明らかになってきました。これは、筋肉を構成しているアミノ酸の一種の「グルタミン」が関係していると考えられています。
風邪や肺炎などの病気になると筋肉が分解され、グルタミンが放出されます。このグルタミンは、免疫細胞であるリンパ球を増やす働きがあるため、筋肉量が多いとそれだけグルタミンを貯蔵、放出できることとなり、病気に抵抗できる体になります。逆に筋肉量が少ないと、病気と闘えなくなってしまいます。また、筋肉にはグルタミンの働きだけでなく、ブドウ糖を取り込み、血糖値の上昇を抑える作用もあるため、筋肉の衰えは動脈硬化、糖尿病、心筋梗塞など様々な病気との関係が明らかになってきています。
筋肉量は20〜30歳をピークにし、その後加齢とともに徐々に低下していきます。さまざまな病気や怪我を予防するためにも筋肉量を維持することが大切です。
【番外編】
火事場の馬鹿力
生命の危機的状況になった時、普段では考えられないような力を発揮することを「火事場の馬鹿力」といいますが、これはどういった仕組みなのでしょうか?
私たちの体は、100%の力を出し続けると体に大きな負担がかかるため、予め安全装置のようなものが脳にかけられています。この安全装置により、普段の発揮できる力には制限がかけられています。しかし、緊急事態に直面することで体を戦闘態勢にするアドレナリンが大量に分泌され、脳の安全装置が外され、普段よりも大きな力を発揮できるようになります。
これが、「火事場の馬鹿力」の正体です。
次回は「関節と腱」です。
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