糖化による老化
糖化による老化
最近の研究では、老化には「酸化」だけでなく「糖化」との関係も注目されています。
糖化とは
「糖化」とは、タンパク質と糖質を加熱し褐色の物質ができる反応のことを言います。糖化は、魚や肉、パンなどを焼いた時の焦げ色や味噌などが呈する茶色など、食品中に起こる「メイラード反応」という化学反応として知られていました。これらの効果は、食品の香りや風味を良くし、保存性や栄養価を高めますが、加熱しすぎると味噌の品質の劣化につながるなど、主に食品学の分野で研究が進められていました。しかし、メイラード反応は、食品だけでなく人間の体の中でも起こり、メイラード反応によりできた「AGE(終末糖化産物)」という物質が体の老化の原因になってることが発見されました。
AGEが体内に蓄積
【AGEはどのように生まれるのか?】
まず、全身に分布しているタンパク質と糖質が結びつき、糖化したタンパク質ができます。この反応が進むと、「シッフ塩基」、「アマドリ化合物」へと変化します。両方ともタンパク質が糖化する初期段階でできる物質です。ここからさらにアマドリ化合物が体温で熱せられたり、高血糖状態にさらされると、AGEになります。AGEは最終産物なので、一度できたら元の物質に戻ることはありません。
【糖尿病の人はAGEが多い?】
AGEの量は、血糖の量と時間に比例します。そのため、血糖値が高いと体の中のタンパク質と糖質が結合しやすくなり、またその期間が長いほどAGEが作られやすくなり、老化が進みます。血糖値が高い状態が続いている「糖尿病」の指標に「ヘモグロビンA1c値」があり、これはヘモグロビンというタンパク質にブドウ糖が結合したもので、AGEができるまでのプロセスでいうと、アマドリ化合物の一種でAGEの前段階の物質です。
つまり、糖尿病の人は血糖値が高くヘモグロビンA1cが多いため、AGEができやすく、老化しやすい体であるといえます。
しかし、AGEは糖尿病の人にしか作られないわけではありません。ヘモグロビンA1cは健康な人であっても5%程度体内に存在しています。
長く生きているとその分AGEの量は多くなり、また、若い人でも高血糖であればAGEが作られるため、人により老化の進行のスピードに違いが出てきます。
【AGEの体への影響】
タンパク質の中でも、AGEの影響を受けやすいのが「コラーゲン」です。コラーゲンは、体内のタンパク質の約30%を占めていて、肌だけでなく、骨や血管、脳など体内のあらゆるところに存在しています。このコラーゲンにAGEが蓄積すると、肌の弾力性・柔軟性が失われるだけでく、血管の硬化からくる「動脈硬化」や、「心筋梗塞」、「脳梗塞」などの原因となったり、骨に蓄積すると「骨粗しょう症」、目の場合は「白内障」のリスクが高まり、脳の場合は「アルツハイマー病」になるという説もあります。
《コラーゲンとAGE》
コラーゲンは繊維状の層で、層の間は「生理的架橋」と呼ばれるものでつながっています。これがコラーゲンのハリや弾力を保つ支えとなっています。AGEは、この生理的架橋のようにコラーゲンを結びつけるように存在するため、AGEが増えるとコラーゲンのクッション機能がどんどん失われてしまいます。また、古くなったコラーゲンは、「コラゲナーゼ」という酵素によって分解され新しいコラーゲンに作りかえられるのですが、AGEにより古くなったコラーゲンはこの酵素による分解が起こらず、体内にどんどん蓄積されていきます。
AGE処理機能
私たちの体の中には、どんどん蓄積されるAGEを処理する仕組みが備わっています。それは、白血球の1つ「マクロファージ」によるもので、AGEを食べて処理してくれます。しかし、マクロファージは、AGEのみだけでなくコラーゲンも一緒に食べてしまいます。そのため、コラーゲンを修復する「TGF-β」という因子を放出するのですが、するとコラーゲンが過剰に作られ、密集しすぎることで硬化し弾力が失われ、逆にコラーゲンの機能を失いやすくなると言われています。また、血管のコラーゲンにAGEが蓄積すると、血管内にコレステロールがたまりやすくなり、たまったコレステロールを処理するためにマクロファージがきて食べますが、食べたコレステロールは粥状になり、「プラーク」としてかたまりを残します。プラークはやがて破れて血管壁が傷つくと、血小板が修復作業に入るため、血栓ができます。これが動脈硬化の始まりです。私たちの体にはAGE処理機能がありながら、AGEを完全に処理するのは難しいようです。
つまり、AGEによる老化を抑えるには、体の中にAGEを作らない!ということが最優先だといえます。
次回は、「老化速度を遅らせよう!」です。
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